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高松高等裁判所 昭和44年(ラ)8号 決定

抗告人 松山茂(仮名)

相手方 松山君子(仮名)

主文

原審判を左のとおり変更する。

抗告人松山茂は相手方松山君子に対し、金一七万六、〇〇〇円を支払え。

抗告人は相手方に対し、昭和四五年一月以降双方が同居または離婚するにいたるまでの間、毎月金三万九、〇〇〇円宛を、各月の末日限り支払え。

抗告人は相手方に対し、前項の期間中毎年六月に八万円、一二月に一〇万円を各支払月の末日限り支払え。

前各項の金員の支払場所は相手方の住所とする。

理由

本件抗告の趣旨および理由は別紙のとおりである。

よつて一件記録を検討するに、抗告人に対する昭和四四年度分の市民税および県民税の年税額は九万一、五〇〇円(月平均七、六二五円)であつて、右税額はすべて抗告人がその勤務先である○○○○株式会社から支給される給与中より源泉徴収されることなく、別途高松市指定の金融機関を通じて納付されていることが認められるところ、婚姻費用の分担額を決定する際に斟酌さるべき収入とは現実に夫婦の生活費に供しうる額にほかならないのであるから、給与所得者である抗告人の収入額の算定にあたつては右市民税・県民税の額を控除するのが相当である。しかして、原審判認定の事実関係を前提とし、右市民税・県民税の額をも抗告人の給与所得額から控除したうえ、原審判と同一の算定方式に従つて各金額を計算し、記録上認められるその他一切の事情を考慮すると、抗告人は相手方に対し、毎月金三万九、〇〇〇円宛を婚姻費用の分担として支払うべきものと認めるのが相当である。(したがつて、昭和四四年一二月末日現在の未払金額は合計一七万六、〇〇〇円となる。)

なお、抗告人主張の電話料、自動車税などは、本来抗告人自身の生活費として支出すべきものであつて、婚姻費用の分担額決定に際して斟酌される収入の額の算出にあたつて控除さるべきものではないから、原審判が抗告人の収入の額を認定するについて右電話料等の金額を控除しなかつたからといつてなんら違法不当ということはできない。

以上の次第であるから、原審判は右の限度で変更することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 橘盛行 裁判官 今中道信 藤原弘道)

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